名もない詩集
空を早く駆け抜ける
雲のように
時は過ぎて行く

君と私がこの世界で
生きていたことさえ
指を絡め見つめ合い
心を重ねていた事さえ

現実にありはしない
まるで夢だったと
言いたげに
遠くへ遠くへ
押しやられ

そこにはもう
記憶の残骸
愛の骸のように
墓標すらありはしない

だけど
愛してたと
この胸は覚えてる

あの頃の
涙を吸った指輪だけが
二人の確かな
月日を教えている

もう会えない
遠くへ
行った君の
大人になった顔を
見ることもなく

鏡の中
自分だけが変わってゆく

ねぇ
誰が忘れても
街が姿を変えても
写真の中の君が
陽炎のように
揺れているよ

憎んでも
憎む程
愛だけが尚
焦げてく

追いかける事も
腕につかまる事も
泣き顔も
笑顔さえも
変わらないままで
二人は

いつまで
苦しめばいい

いつまで
悔やめばいい

いつまで
誰かの為生きればいい

自分の為だけに
生きる事が
許されるなら

世界の終わりまで
抱きしめ合ってたって
構わないだろう
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