名もない詩集
あなたから
口移しで貰った
甘い毒に
侵されて

突然粉ごなに
砕けた破片を
飲み下すまでの
悲しい時間を

もう
私などすぐに
切り離して
背中を向けた
あなたは
見る事もない

同じ場所で
あなたを
見かける事が
辛くて
何一つ書けない
何一つ読めない

悪い男に
かかったと
いい聞かせて
忘れる事が
きっと
楽になれる近道

寒い冬が
去るように
新しい季節が
めぐりゆく

あなたはきっと
ひとつの
短い季節だった

私にとって
熱い火傷
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