行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?

marriage

「波留斗、これはいったい・・・」

マンションに戻ると、さくらの部屋の中にはいくつもの段ボールが積み重なっていた。

「ああ、昨日のうちにさくらが住んでた以前のマンションを解約してきた。荷物はこっちに運ぶしかないだろ」

「そんな強引な・・・」

「暴君好きなんだろ?」

さくらが唖然としていると、波留斗はニヤリと笑った。

「家具は?」

「貸倉庫に預けてある。いずれ引っ越しするからそのときに必要なものと不要なものを分けるといい」

さくらが呆然と立ち尽くしている。

こんな姿はレアだ、と内心、波留斗は嬉しくなった。

「それと、これにサインして」

波留斗がテーブルの上に出したのは、雑誌に付いていたと思われるピンクの婚姻届。

「゛さくら゛に、ちなんでピンクにしてみた」

「そこかよ」

どう突っ込んでいいか迷っていたさくらは、波留斗の発言に軽くジャブをいれた。

すでに、波留斗の署名と証人の署名は済んでいた。

南條優美子と西園寺護の名前。

「いつの間に?」

「母さんにはさくらと訪ねたあの日。結婚したい人がいるって言ったら迷わず記入してくれたよ。西園寺社長には昨日」

「昨日?」

昨日は木曜日で、波留斗は通常通り仕事に出掛け、いつもの時間に帰宅したはずだ。

「営業の合間に西園寺コーポレーション本社に立ち寄った。今日のパーティーで兄さんが何か仕掛けると思ってたから前もって根回ししてたんだ」

さくらはフゥっとため息をつくと、じっと波留斗を見つめ

「肝心の言葉をさくらは何も聞いてないけど?」

と波留斗に近寄ってネクタイを掴み捻りあげた。

スーツを着た二人はイケメン二人の修羅場にしか見えないが、生憎、二人の他にはギャラリーはいない。

「お前は俺のもんだ。こんなの書く前から決まってる」

「んっ・・」

さくらの頭をガシッと右手で掴み、激しく唇を奪う波留斗。

何度も言うが、男同士の絡みにしか見えないのが残念・・・。

唇が離れると、さくらはクスッと笑って

「へえ、決まってるんだ?」

と微笑み、うっとりと波留斗の首に両腕を回した。

「俺に夢中なくせに。ほら、素直にウンって言えよ。結婚するだろ?」

「うん。覚悟はいい?」

「望むところだ」

今度はさくらから、波留斗の唇を奪いに行く。

どこか自信なさげな暴君系イケメンは、今度こそ本物の暴君系フィアンセとなった。
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