行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「triple birth unionだって、才能の塊で、やりたいこともはっきりしている桃子と拓海のために始めたようなもの。二人の才能があったからこそここまで大きくなれたんだよね」

さくらは自嘲するように、独り言のように続ける。

「だから、コスプレしてイベントに出た時、みんなが私という個人に注目してくれて・・・嬉しそうに笑ってくれて。西園寺さくらではない、私個人をみてくれて。初めて自分の存在価値を感じた気がした」

箸を止めて、さくらが笑った。

「波留斗もそんな私を見つけ出してくれた。だから、ありがとう。期間限定だけど精一杯頑張るからね」

波留斗は駆け寄って抱き締めたい気持ちを懸命に押し込めて

「ああ、頼んだぞ」

と、言うだけに留めた。

さくらのひたむきな想いを、自分の私欲で塗りつぶしてはならない気がして・・・。

何より、さくらからの信用を波留斗自身が失いたくなかったから。

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