行き着く先は･･･甘い貴方の檻の中？

南條家の次男として生まれた波留斗。

長男の悠紀斗とは常に比較されて育った。

南條ビバレッジも、西園寺コーポレーションの足元にも及ばないが、大手企業として名は知れている。

明治時代から続く飲料水の会社。

今では飲料水だけでなく、冷凍食品やお菓子等にも事業を拡大している。

父親も会社役員も、当然、悠紀斗を跡継ぎとして考え期待してきた。

長男の悠紀斗は、昔から他人の懐に潜り込むことがうまい人タラシだ。

頭も良く、顔も良い゛跡継ぎの御曹司゛と来れば、言い寄る女性も数知れず。

数々の浮き名を流しながらも、愛想の良い外面とは違い、実際は、自分の役に立たない人間には関心を示さない冷淡な人物だ。

そんな兄の後ろ姿を見て育った波留斗は、心と裏腹に愛想を良くすることを嫌悪し、

゛人見知りで我が儘な次男゛

という烙印を押され、会社でも広報部長という立場に甘んじている。

゛大企業の御曹司、しかも次男゛

を、都合がよいと言い寄る女も多数いたが、波留斗は゛そのままの波留斗が好きだ゛と言って告白してきた大人しそうな女と真面目に付き合った。

しかし、その女も最後には

「地位もなくて、愛想のない俺様キャラなんて面白味もないわ」

と本音を吐いて去っていった。

以来、波留斗は女性とは一線をおいて接するようになった。

企業人として、父の期待には答えたいという思いから、仕事には真面目に取り組んだ。

幼馴染みで親友の千歳と共に、商品開発と広報活動に熱心に取り組むことで、会社の売り上げに貢献してきたつもりだ。

兄のように会社のブレインとしてトップで活躍するのではなく、現場からのボトムアップをはかる。

波留斗の人生は、そうやって続いていく。

それだけで満足する、はずだった。

今、目の前で本音を語る、魅力的な西園寺さくらに会うまでは・・・。