行き着く先は･･･甘い貴方の檻の中？
波留斗と母親の優美子の関係は、あまり友好とはいえない。

優美子はいつも笑っているし、波留斗に対して声を荒げることは決してない。

しかしそれが、波留斗にとっては大きな壁を感じさせることになり、あの事故の後ろめたさにも繋がっていた。

大人になってからは独り暮らしを始めて、滅多に実家に帰ることはなかったが、定期的に優美子からの消息確認は行われていた。


「母さん？」

さくらが晩御飯の片付けと洗い物をしている間に、波留斗は、優美子に電話を掛けた。

『あら、波留斗さんからの電話なんて珍しいわね』

嬉しそうな母親の声にホッとしながらも、それは演技なのではないかと裏の裏を読んでしまう。

「今度、そちらに伺ってもよろしいでしょうか」

まるで商談相手に対するような波留斗の口調に優美子が苦笑する。

『自分の家に帰るのに承諾がいるの？フフ。・・・もしかして、何か良いお話でも聞けるのかしら？』

「結婚を考えている彼女を連れていこうかと」

『まあ、あの波留斗さんが？まあ、まあ、こうしてはいられないわ。明日、明日は土曜日よね？明日にしましょ』

いつになく浮かれた声の優美子は、明日の昼食を実家で一緒に食べようと、あっという間に段取りしてしまった。

「さくら、明日のお昼は大丈夫か？」

「明日？大丈夫だよ」

『まあ、まあ、さくらさんと仰るのね？楽しみにしておくわ』

そう言うと、優美子は早々に電話を切ってしまった。

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