枯れた涙にさようなら。
1=プロローグ


私の初恋は、散ることなく終わった。

助かったと・も思ったけど、それよりも想いを伝えずに終わってしまったことへの悔しさだとかもどかしさだとか、そういう気持ちの方が大きかった。
伝えたところで私の恋が実ることはないのだけれど、でも・なんというか、試験を受けてもないのに試験に落ちた結果だけを知らされたみたいな。理由は分かっていれど、腑に落ちないようなそんなよく分からない感情がぐるぐると巡っていたのだった。

恋に落ちた瞬間は、惜しくも無かったのだと思う。
幼稚園で知り合った同じマンションの幼馴染とは、名前の通りずっと私の隣に馴染んでいた。いつも一緒で、その時間は絶え間無く流れていて、二人の間に座標を置くことが難しいのだ。
そう、良いところも悪いところも全てを見てきた私は、いつの間にか彼に心を奪われてしまっていたのだった。

その恋心に気づいてからというもの、私は常に彼にドキドキさせられっぱなしで。日常だったことが、当たり前だったことが、そういう風に捉えられなくなってしまったわけなのだ。彼に他意はないことだって重々承知の上だったけれど、それでも少しでもと期待してしまうことは恋をしている人にはよく分かるはずだ。

きっとあの時も、あの時だって、最後まで私はそういう期待を捨てていなかった。だからこそより傷ついたし、いっそう自分を恥じた。
どれだけ自分に自信があったのかとか自惚れていたのかとか、誰よりもマイナスだと思っていたはずだったのに知らないうちにそういう感情を抱いていることを目の当たりにして、どこか近くに穴があったら入りたかった。ただそこが自分の家で、目の前に広がる光景が信じられなかったから、結局私が入ったのは自分の部屋だったのだけれど。



あれから5年。


私・坪井(つぼい)かすみと彼・田所(たどころ)貴一(きいち)は今も変わらず〈ただの〉幼馴染の関係を続けている。


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