枯れた涙にさようなら。
そういえばさ、と横から天満くんが話しかけてきた。
「坪井さん、歌すっごいうまかったね。習ってたりしてたの?」
「え?!そうかな…?学校で習ったくらいで特別なことはしてないけど…」
他人とカラオケに行く機会がなくて、こういう風に褒められるのはとても新鮮。きいちゃんと来ても、そんなこと言われたことないし。
「うん、特に一番最初に歌ってたのが好きだったな」
最初に歌ったのは…
「えっと…ずっと君が好きだった、かな?」
「うん、多分それ!歌詞がすっごく切ないやつ」
【ずっと君が好きだった
だけど口には出せないまま
今も君が大好きだ
君は僕の隣にいない
幸せそうな君を見つめる】
関係を壊したくなくて、好きな子の恋を応援してしまった男の子がテーマの歌だ。
「なんか、すごく合ってた」
「……ありがと」
そりゃそうだよ。
ずるずると気持ちを引きずってるのは私も一緒だから。
「天満くんもかっこよかったよ。マジンガーZ」
ちょっといたずらっぽく言ってみると、勝手に入れられたの!って顔を赤くしながら少しふくれっ面になった。
歌ってるときも茹でだこのようになりながら歌ってたのを思い出す。
「ふふっ」
「ちょ、思い出し笑わいしないで下さい…」
「ごめんなさい笑」
だって、あんなに顔赤くしながら頑張って歌ってたのに、女の子の歓声で全然聞こえなかったんだもん。
「かすみっち〜!次歌う??」
さっきまでaikoを歌っていた尾形さんが近くにいた私にマイクを向けてくれた。
「う〜ん…いいや!ちょっと疲れちゃったし、しばらく皆の聞いとく」
どうせ天満くんと話してたし。