枯れた涙にさようなら。
聞きたいことがある。
天満くんはそう言って、立ち止まった。
「???なに??」
私も立ち止まり、横に立つ天満くんの方見る。
「坪井さんの好きな人って……もしかして…もう相手がいる人、なの?」
「……………え?」
「ごめん、こんなこと聞くのって凄く失礼だと思うし、触れられたく無いことだってのは承知の上でなんだけど…」
誰にも言ったことがない私の恋心。
儚く終わった初恋。
「なんで…そう、思うの?」
好きな人が誰か、じゃなくて好きな人の、好きな人。
「俺もさ、失恋してるんだよね。……最初から」
「……え?」
どういう思いで話しているのか分からないけど、天満くんはゆっくりと歩き出した。それに私もついていく。
「あの本。感情移入したんじゃなくて、自分の感情そのものだったんじゃない?俺が感じたみたいに」
さらさらと、砂のように天満くんの口からは言葉がこぼれてくる。風に乗ったそれを、私の体は被る。
「さっき歌ってた歌もそう。引きずってるのは……言葉にされてないから、とか?」
こちらを振り返った天満くんの顔は、きっと、今の私と同じ顔。
全部図星だった。
忘れよう忘れようと思っていても、気になってしまうのはそういうものばかりで、片思いをずるずると続けている。
「天満くんには…もう相手がいるんだ、好きな人に」
既に片手では数えられないほど告白されてるんじゃないかと噂されるほどモテている天満くんが、恋人を作らない理由。
「似た者同士だね、私たち」