枯れた涙にさようなら。
「じゃあアンケートとるから、どこが良いか書いた人から帰っていいよ〜明日また発表しま〜す!以上っ!!」
呼びかけからこの締めまで、約15分という短い間にテキパキと物事を進めていったのはクラス委員の東奏さんだった。
自分の席に着くためにこちらの方へ向かってくる。入学式から二週間経った頃に、担任が早くも席替えをしてきたことにより、東さんとは斜め前後の位置関係になった。近頃そのおかげで東さんとの会話が増えてきている。
「お疲れ様。流石、あっという間に決まっちゃったね」
そこで一言労りの言葉を。クラスをまとめるのって結構大変だったりするもの。私の能力だと到底ムリだろうなぁ。
「あはは、ありがと。坪井さんは?参加するの?」
「うん。こういう行事にでも参加しとかないと自分からコミュニケーション取るの苦手だから、クラスに馴染めないと思うし」
参加することに意味があるんだよ、ってね。仲良くなろうという意思だけでも示しとかないと。
いつまでも甘えてたらダメなんだから。
「良かった。クラスの雰囲気が良くなったら学校も過ごしやすくなるしね。今回来れなかった子も居心地悪くならないように対策練らないと」
「そんなところまで考えられるなんてやっぱり東さんは流石だなぁ。私なんて自分のことで精一杯なのに」
恋だとか、そんなことばっかりで。
「みんなそうだと思うよ。ただ私の場合は周りから自分のことを固めていってるだけでさ」
「そっか……そんなもんなのかな、みんなも」
だってみんな毎日がすっごく楽しそう。言い方悪くなっちゃうけど、悩みなんてなさそうっていう感じ。
「そりゃあ表には出さないよ。だからはっきりとは分かんないけど…でも、意外と私相談とかされるんだよね〜」
意外も何もないけど。
「やっぱりみんなもいっぱいいっぱいなんだな〜って。まぁ、高校生になったばっかりだもんね〜」
自分だってそうじゃない、ってツッコミを入れたくなった。
「ありがと。私だけじゃないって思ったら少し気持ちが軽くなったかも。流石だね、東さん」
「そ、そんなことないよ。」
こういう風に改めてお礼されると照れちゃうね、って。可愛過ぎ。
「ねぇ、下の名前で呼んでもいい?出来たら、私の名前も下で呼んで欲しいなって…」
東さんはさっきよりも少しだけ音量が小さくなった声で言う。少し俯いて、ちょっと躊躇うように。
「えっ、いいの?!それなら是非…」
「じゃあ交渉成立!かすみちゃん、改めて宜しくね。明日楽しもう!」
「うんっ!」