もうひとりの極上御曹司


家事一般問題なくこなす駿平だが、やはり学生の千春の方が時間的に融通が利くせいで、彼女が引き受ける割合が年々増えている。

今後千春も就職し駿平と離れて暮らす可能性もあることを考えれば、今すぐにでも大学時代から付き合っている亜沙美と早く結婚して落ち着いてほしいと思う。

けれど、駿平は千春が大学を卒業して就職するまでは結婚しないと決めている。

十二年前に亡くなった両親に代わって千春を一人前に育て上げるためだけに生きてきた駿平にとって、それは当然のこと。

駿平と同い年の亜沙美の気持ちを考えればそれはどうなんだと千春は思うが、これだけは譲れないとばかりに結婚する気配はまるでない。

千春は自分のために重荷を背負い、今もなお千春を支えてくれる駿平だけでなく、亜沙美にも申しわけなくて仕方がない。

駿平と高校の頃から十年以上付き合っている亜沙美は特に何も口にしないが、それだけ長く付き合うほど駿平が好きなのだ。

結婚したいと思っているにちがいない。

千春の大学卒業まであと二年と少しとなった今、少しでも早く自立できるようにとバイトを始めたが、なかなか現実は厳しい。

ひとり暮らしができるほど稼ごうと思えば大学の勉強がおろそかになる。

決して安くはない学費を用意してくれる駿平のためにも、そしてなより自分のためにも成績を落とすわけにはいかず、週に三日程度バイトをするのが精いっぱいだ。

こんなゆっくりとしたペースだと、自立できるのはそれこそ大学卒業後に就職をしてからになりそうで、千春は情けなくなる。

早く駿平と亜沙美を結婚させてあげたい。

そのためにはどうすればいいのだろうかと悩むことも増えた。

けれど、妙案が浮かぶわけでもなく、毎日の授業と家事、そしてバイトに励む毎日が淡々と過ぎていく。

それが本当に心苦しい。


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