もうひとりの極上御曹司

駿平がその後弁護士を目指すきっかけとなった人、小平法律事務所の代表だ。

青磁とともにやってきたのは彼の妹であり政財界に大きな影響力を持つ木島グループのトップである木島征市の妻、緑だった。

千春と駿平の両親が巻き込まれた事故が起きて以来、連日続く報道を気にかけていた二人。

その中でも両親を失い兄と妹二人きりになった駿平達のことを特に心配していた。

青磁は弁護士としての立場からどうにかして二人を助けてやりたいという思いから、そして緑はマスコミの強引な取材や報道に怒りを覚え、どれだけのお金を使ってでも二人を守るという思い込みにも似た正義感によって訪ねてきたのだ。

『私があなたたちを幸せにしてあげる。まずは我が家にいらっしゃい。マスコミに写真の一枚すら撮らせないし、邪魔もさせない。そうね、まずはおいしいお食事を用意するから、それを食べてたくさん眠りましょうね』

涙を流し続けていた千春の目線に合わせてしゃがみこんだ緑の言葉に、千春は「チョコレート、ある?」と小さな声で答えた。

緑はひくひくとしゃくりあげる千春の頬を優しく撫で、にっこりとほほ笑んだ。

『チョコレートが好きなのね。だったら本場のベルギーに今から行ってもいいわよ? プライベートジェットの手配なら秘書の吉見に言えばあっという間だもの。お気に入りのお店のチョコレートをぜーんぶ買ってあげるわ。ふふっ。女の子はかわいいわ。うちの愼哉と悠生とは大違い』



< 33 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop