もうひとりの極上御曹司
「え、十年以上って、それって、ロリコン……」
もしや小学生の頃から見られていたのだろうかと思わず口を衝いて出た言葉に、千春は慌てて両手で口を押えた。
「あのな……。本気で手に入れようと思ったのは千春が高校生になった頃で……」
愼哉が眉を寄せ、口を開いたそのとき。
「千春ちゃん、ここにいるの?」
バタンとドアが乱暴に開いた。
「愼哉は? 愼哉もいるのかしら?」
聞き慣れた声が部屋に響いたかと思うと、緑が部屋に駆け込んできた。
「え、緑さん?」
「また、邪魔しにきたのかよ」
突然現れた緑に、千春と愼哉は顔を見合わせた。
「愼哉、いい加減千春ちゃんにプロポーズしなさいよ。じれったくて仲良しの記者にそろそろ愼哉が結婚するって教えて記事にしてもらったのに、本当に動きが遅いんだから……あら?」
ソファで抱き合う千春と愼哉に気付いた緑は、一瞬目を丸くし黙り込んだが。
「まあ、ようやく千春ちゃんが私の娘になるのね。愼哉はまだまだプロポーズしそうにないって悠生から連絡があったから慌てて帰ってきたけど。でかしたわ、愼哉」
胸の前で両手を合わせ、感慨深げに目を細める緑をぼんやり見ながら、千春は「どういうこと……?」と呟いた。