心に一滴の雫を。
無意識に身構えていると彼に髪の毛を払われ、後は一気に牙を突き立てられた。

「はぁっ………」

「っ!!….くっ…!」

歯をくいしばって耐えようとしたが、すぐにそれも無理になる。

自分の血が勢いよく吸われていくのも初めてで、今まで母が気を使ってくれていたのがわかった。

「あ、……もう」

音が立つほどの吸血に、目眩がしてくる。

倒れまいと相手の肩を掴んでいたけれど、力が徐々に抜けて後ろに倒れ込んでしまった。
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