心に一滴の雫を。
「…で、えと、あっ。な、名前を聞いてません!あとここはどこですか?!」

意識が鮮明化していくに連れて沢山の疑問が浮かんでくる。

それを整理しようとすると忘れてしまいそうで柄にもなく矢継ぎ早に質問してしまった。

「えーとまず名前か。俺は久澤 凱斗(ひさざわ かいと)。教室にいるときはボーッとしてたようだけど、同じクラスだったよ」

今更のように聞いた彼の名は、妙に馴染み深かった。

心の中で彼の名を反芻する。忘れないように。

すると頭の中で一度だけ、一つの光景が映し出された。

薄暗闇の中、顔の見えない誰かが涙を流していてー…。
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