心に一滴の雫を。
母の血を吸ったときとは違う、現実味のあるシーン。

加えて、久しぶりにその能力を使ったという認識が疲労度を倍増させる。

自分で制御できる力ではないし、初めての相手だと今みたいに酷い頭痛がする。

だから今まで母の血だけでしか喉を潤してきていなかったのに。

「…久澤さん、私は」

半ば無理矢理話題と表情を変える。

「私は、石和 聖歌(いさわ せいか)と言います…」

正直なことを言えば、今は一刻も彼と離れたかった。
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