心に一滴の雫を。
「………」

彼は無言のまま私の方に腕を伸ばしたかと思えば、頭をグリグリと撫でる。

まだ頭が痛いのを分かっているくせに笑顔でするとは、なかなか良い度胸である。

「…仲良いんだね。もしかして、入学前からの仲?」

一切の邪気のなさでそう聞いてくる寮長さん。

「いや、会ったのはー…」

「まぁ、そんなところですよ。ね?」

私の言葉に割り込むように答えた凱斗。

無茶苦茶すぎるっ。

早くも『礼儀正しい石和 聖歌』の皮が剥がれそうだった。

先生相手じゃないからいいけども。
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