心に一滴の雫を。
「え、何で隠れるの?」

羞恥も忘れて問いかけるも、彼が言葉を発する前に窓の方でコンコン、と叩く音が聞こえた。

立ち上がりながら時計を見ると、寮の就寝時間だという10時を過ぎていた。

「誰で…あっ」

窓を開けてみると、所在なさげに凱斗が立っていた。

「ど、どうしたんです…か」

何となく気まずい。出会った初日に血を吸われた相手だと思うと余計に。

謎の闖入者は、一度自身の黒髪を触ると、意を決したように口を開いた。
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