心に一滴の雫を。
声を潜めて問いかける。

その間にも足音が聞こえてきて、慣れない緊迫感が増す。

「これって、部屋の中まで入ってくるの?」

「玄関までは…入ってきたよ。だから電気消して、寝たふりでもしないとバレる」

そう聞いた瞬間、速攻で明かりを消す。

寝たふりと言われても、彼はどうするのだろうか。

とりあえず数メートル先のベッドに向かおうとする。が、悠長にしている時間はなかったようだ。

一際大きく足音が聞こえる。隣の部屋の確認が終わったのだ。

焦ってつまずきそうになったとき、凱斗の手が私の腕を引っ張った。
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