心に一滴の雫を。
布団をかけてくれたらしい『セイ』という奴が何なのか、少しは気になるがそれどころではない。

足音が消える。

一秒、二秒、三秒………。

結構長いこと部屋の様子を見ているようで、凱斗の身体にも緊張が走る。

ードクン、ドクン。

「……っ」

意識が研ぎ澄まされていたからか、自身の頭に回された腕に流れる血の音さえも大きく聞こえてしまう。

凱斗の持つ能力は耳、聴力の強化だったのだ。

だから聖歌が机を叩く音だって聞こえた。

彼女の心臓の音も…。
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