心に一滴の雫を。
この時間は彼にとって拷問にも等しい時間だった。

新鮮でおいしい血が目の前で流れている。

人間で言えば、大好物がずっと視界に入っている状態だ。

このままでは耐えきれない。

ー彼女の首筋に咬みついて思う存分、血を飲みたい。

ようやく再度足音が聞こえ始め、ドアが外側から鍵をかけられるのがわかる。

体の力を抜いて自身から離れようとした聖歌を、凱斗は回された腕を掴んで止めていた。

「どう、したの?」

説明するのももどかしくて、彼女を力任せに押し倒す。
< 54 / 60 >

この作品をシェア

pagetop