果報者
「.....あ、静哉!おそー........ぃ......」







久しぶりの彼女の声。
久しぶりのその姿。



部屋に入った俺は言葉を失った、



それと同時に彼女の目も見開かれ



お互いがお互いを見つめる
奇妙な空間だけが作り出されてた。





「.........たか....なんで..........」





彼女に会ったら言うって決めてたセリフも
笑って冗談を言うって決めてたことも
全てが頭から抜け落ちていた。






「.........っ久しぶり....っ」





ようやく出た言葉は
味気のない一言だけで



ドアの前から部屋の中に入ることも
ベッドに近付くこともできないまま



ただ立ち尽くすしか出来ない俺がいた。
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