果報者
しばらく抱き合っていた俺らは
遠慮気味に入ってきた、
静哉によって邪魔された。



頬を赤く染める彼女は
恥ずかしそうに、でも、確かに
俺の指を握った。






「あ、俺邪魔やった?」


「邪魔っちゃ邪魔やな。」


「はぁ!さっきまで死にそうな顔してたくせに!」


「うっさい!言うなそれを!」






病室に入り
確かに俺の手を握るまこを見て
静哉は安心したやろう。



タイミングを見計らって
入ってきてくれたことなんて
バレバレや。




飲み物でも買ってくるわ、なんて
病室を出て行ったのも
彼なりの優しさなんやろう。






「ちょっと待っててや。」






彼女を残し
俺は静哉を追いかけた。



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