果報者
毎年やってくるコンサートツアー。



今年は回数も多くって
それに並んで入った舞台の仕事。



何もかもが限界やった。
体力も頭も精神も。



もちろん仕事は楽しい。
今までの俺ならこんなことで限界なんて
感じてなかったはず。



でも1本切れてしまった糸は
元に戻せんぐらいダメージを食らってて



夜泣きする娘を外に連れ出す毎日。
泣き出す理由が分からんくて焦る日々。



誰かに預けたらええやん。
親に頼ったらええやん。



そんな考えは俺の選択肢にはなくて



たった1人のこの子の父ちゃんなんやから。
この子の父親は俺しかおらんのやから。



そう思ったら誰にも頼れんかった。
助けてって言えんかった。
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