果報者
「あ、起きた。」






目を覚ますとそこは寝室ではなくて
娘の鳴き声も響いてなくて






「.....桃は!?」





ガンガンする頭を押さえて飛び起きた。





「大丈夫や。
斗と志乃さんが見てくれてるから。」





なだめるように
もう一度俺をベッドに寝かせた圭太が
心配そうに俺の顔を覗き込んだ。






「紺ちゃんさ、
何で壊れる前に言ってくれへんの」


「.................」


「気付かん俺らも悪かったけど。」








俺は倒れたんや。
しかもコンサート中に。



みんなに迷惑かけて
結局娘のことも守れんくて






「ごめん」


「ええよええよ。今はゆっくり休み。
全然慣れてへんのやろ?」






圭太は怒ってなかった。



コンサート中に突然いなくなった俺を
みんながカバーしてくれたことなんて
聞かんくても分かる。



みんなに迷惑かけて
娘を守ることも出来んくて
仕事すらしっかり出来んくて




俺はアイドルも父親も






失格や。
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