果報者
圭太が帰った後。



病室はしんと静まり返っていた。





娘の鳴き声も笑い声も何にもしない。
ただ静かなだけの空間。



思い出すのは
頭をよぎるのは
目を瞑ると浮かぶのは



大好きなあの笑顔で



こんなとこで寝てたら
思い出してしまって



もう会うことすら許されない姿が
浮かんできて







「.........まこっ




まこ.........っ会いたい.........っ」





我慢していたものが溢れた。


積み上げたものが壊れた。



決して声に出さなかったことを
叫んでた。





俺はもう限界やった。



会いたくて会いたくて会いたくて



決して弱音は吐かないって決めてたのに
笑って生きるって決めてたのに



俺はお前がおらんとあかんみたい。






そして泣きながら眠りについた。



確かめることも
もう二度と感じることも出来ない
彼女の存在を思い出して眠った。
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