果報者
もう終わりにしよう。
あいつのいーひん人生は
ちっとも楽しくない。



胸で眠る彼女を抱き直そうと
目を向けた時



すっかり目を覚ました桃と目が合った。




俺を見上げてニコニコする彼女は
今からあっちに行こうとしてる
俺の気持ちなんか知るはずもなくて



純粋な瞳に
安心して父親の腕に包まれる姿に



俺はまた、涙を流した。



俺から落ちた涙が
桃の頬に落ちて



次々に落ちる涙が彼女に降る。





それはまるで彼女が泣いているように見えて
”父ちゃん、泣かないで”
そう言っているように見えて




そんな純粋な瞳から逃げるように
前を向いた。



そして俺は1歩踏み出した。
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