果報者
「ごめん.......っ」


「紺ちゃん.....?」


「めっちゃ怖い.......っ」


「うん.........」


「ごめん、ちょっと待って欲しい......っ」





個室の外、
陽気な話し声、笑い声が響く中



俺らの間だけ酷く重い空気が取り巻く。



水を運んでくれた店員さんも
そそくさと出て行く。




料理も頼まず
沈黙を破ることなく
お互い向かい合ったまま時間が過ぎる。







「..........笑」






そしたらだんだん笑けてきて
自分が何を怖がっているのか



まだ聞いてもいないことに
怯える自分がおもろくて






「ごめん、静哉。」


「え.......?」


「話してええよ。」


「あ、うん......」





その前に腹ごしらえやなと、
料理が来るのを待った。



これから静哉から聞かされる話。



彼が顔を強張らせる理由。



全てが明らかになった時、
俺の中には何が残るんやろう。




お皿のもがなくなった時、
箸を置いた静哉がまっすぐに俺を見た。





「紺ちゃん、あんな、」
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