果報者
静哉を家に連れて帰り
大きなバッグに荷物を詰め込んだ彼を
家まで送ってそのまま



俺は1人、
湖に来てた。




小瓶に挿されたクラスペディアは
静哉によって新しい花に変えられ



黄色いぼんぼりが昨日より大きく見えた。





地面に座り込み
タバコに火をつけ息を吐き出す。



彼女と付き合ってからやめていたタバコ。



でも今は
吸っていないと落ち着かなくて



何本も何本も
立て続けに吸い続け


気付いた頃には箱が空になっていた。



空になった箱をグシャッと握りつぶす。



タバコを頼れない今、
酒にも弱くて頼れない今、



必死に我慢してた涙を
止めてくれるものは何もなくて




一筋流れ落ちるのを感じた。



一度道を作った涙は
止まることを知らなくて



真夜中に1人。
顔をぐちゃぐちゃにして
声を殺して泣き続けた。
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