果報者
「.......なんもないよ。」


「無理に笑うなや。
ないことないやろ。
話したくないならええけど、
俺とか他のメンバーが気付いてないと思ってる?」


「へ..................」





そうか、
全然隠せてなかったんや。



斗だけにバレたんやと思ってたけど
みんな気付いてたんや。



顔を上げると
不自然に俺から目を逸らす、
メンバーの姿があった。




途端に視界はぼやけてきて
声にならん叫びが涙に変わって





「.......よしよし」





優しく背中を撫でる斗の手が
自然と集まり、ただ
そばにいてくれるみんなが



あまりにも暖かくて



声を殺して初めてメンバーの前で
涙を流した。
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