果報者
分かったよって。
絶対に紺ちゃんには言わないよって。



この、まことの約束を守ることは
本当に彼女の望んでいたことなのか。



当時の私は
彼女の心の奥底にある感情なんて
見えなくて、読めなくて



これが彼女の望みなら
私に託してくれた望みならって




ただ守ることだけを考えていた。






「今日まこちゃんとランチやったんやろ?
楽しかったか?」


「うん。楽しかったよ.....っ」





だから龍の質問にも作り笑いで返し
目を合わすことさえ出来なかった、



いっそ龍には言ってしまおうか。
その方が楽なんじゃないか。



でもそしたら、優しい龍は必ず
紺ちゃんを心配し話そうと言うだろう。



そしたらまこはなんて言う?
言わないでって言ったのに。
信じてたのに。



悲しい顔でそう言うに決まってる。



だから私は隠し続けた。
平気な顔を装うって決めた。



どっちが、何が、
正解なんて分からない。



でも当時の私に出来ることは
まこの望みを精一杯守ることだったから。
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