現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
ハッと吐き捨てるように言ったヴェネディクトはカーライル子爵を睨んでいるけれど、グレースが気になったのはそこじゃない。

「従順で大人しいって……私には無理だと思うけど?」

継母にも大人しく従ってはいなかったし、自立する為に自分で考えて動いてきた。従順な振りで裏で舌を出していたくらいなのだ。
そう言うとヴェネディクトはクスクスと笑ってくれた。

「だよね。うん、僕は知ってるけどね。君をよく知らない人にはじっと耐えるプリンセスってイメージなんだ。実際、社交界ではそんな風に噂になってたし」

継母に虐められ、父の看病と家の仕事を押し付けられて夜会に来られない可哀想なお姫様。そう噂されていると初めて知ったグレースはあんぐりと口を開けて驚いた。

確かに夜会にはほとんど行っていないが社交界自体に全く顔を出してない訳じゃない。それに行かなかったのはグレース本人の希望によるところも大きいのだ。そこまで噂になっていると聞いては継母にも申し訳ない気持ちになる。

「まぁ仕方ないんじゃないかな。だってグレースのデビューの時のドレス、シーモア夫人のお下がりだったろ?あれでは噂されても仕方ないさ」
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