現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
ヴェネディクトは悪びれた様子もないがグレースは罪悪感でちょっと気分が重くなる。

「レディング伯爵は結構がめつい人だからね。その仕事を手伝っていてもカーライルに入ってくる取り分は少ないんじゃないかな。でもグレースと結婚すれば、婚約してまで君を助けようとした僕からの援助も期待できるし、外で遊んでもうるさく言わない妻も持てる。一石二鳥だと思ったんだと思うよ」

気分が重くなっている時にそんな利己的な考えで求婚されたのだと分かると倍に腹が立つ。グレースは嫌悪感に溢れた視線をカーライル子爵に向けた。

「とりあえず、お帰りいただけますか?」

「いや、違うんだ?その、話を聞いてもらえば色々と誤解があることも、あの、分かってもらえると……」

ヴェネディクトの種明かしが進む程青くなっていったカーライル子爵の顔色は今や真っ青だ。しどろもどろになりながら話す言葉にさっきまでの自信も鋭さもない。

ヴェネディクトは蔑むように一瞥して、執事を呼んだ。

「カーライル子爵がお帰りだ。速やかに玄関までお送りしてくれ」
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