現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
シーモア伯夫人がジトリとグレースを見る目は凍りつきそうに冷たい。礼儀知らずで恥知らずだと軽蔑されているようで、グレースの体は知らずとぶるりと震えた。

「それは……」

なんとか言い返したい。だって何にもやましい事などないのだから。ああ、でもどうしてヴェネディクトは一緒に滞在するなんて言ってしまったんだろう。公爵との約束があるとは言ったって、なにもここで話さなくても。いいえ、でもその方が見知らぬ屋敷に私一人で行くより、両親を安心させられると思ったのかも。

ぐるぐると回る思考が言葉が口から出るのを邪魔する。グレースは口を開けては閉じるを繰り返すばかりで説明らしい説明をすることが出来なくなった。

そしてそんな様子を伺っていたヴェネディクトが爆弾を落とした。

「実は……グレースと僕は時期が来たら婚約をしようと約束しているのです」
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