現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「なんの茶番なんだか……」というグレースの心の呟きをよそにヴェネディクトの言葉は滑らかに続いていく。

「グレースは優しくだけでなく、賢くもあります。今回の話もグレースの向上心からで……」

自分をやたらと褒めるのなんてこれ以上聞いていたらきっと恥ずかしくてむず痒くて倒れてしまうと判断したグレースは、途中から意識を逸らして会話を聞かないでおいた。

どうせ今ここで反論する事は出来ないのだ。ヴェネディクトがグレースの不利になるような事をする筈がないという信頼もあるし、ここは任せてしまう方がいいだろう。どうしてヴェネディクトと恋人同士なんていう突飛な作り話をしたのかも、その時に聞けばいい。

そう腹を括ったら、気が楽になった。

継母のお説教を延々と聞かねばならぬ時が度々あるので、意識を飛ばして話を聞かないのは得意だ。
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