現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「仕事の事を話すのも、両親に自分の希望を伝えるのも、グレースにとっては初めてだったんだろう?凄く緊張してて当然だよ」

優しくソファに座らせてくれたヴェネディクトは、そのままグレースの横に腰かけると、そっと手を握った。

「僕はね、グレース。君に幸せになって欲しいんだ。その為ならどんな努力だってするし、多少の嘘なんてどうと言うこともないよ」

「でも婚約なんて……急に……」

「確かに口にしたのは急だったけど、前々から考えてはいたんだ。グレースが望まない結婚をさせられない為に、僕に出来ることはないかなって」

「それって……」

「うん、去年の話を聞いた時から考えてた」

「そっか。そうなのね、ありがとう」
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