現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
去年いきなり継母から持ち込まれた縁談を思い出して、グレースはヴェネディクトの行動がやっと腑に落ちた。

「あの時もヴェネディクトにはいっぱい愚痴も泣き言も聞いてもらったものね」

大抵の意地悪ならちょっと愚痴れば気分を立て直せるグレースだが、流石にあの時は無理だった。

継母の親戚に当たる男との結婚。相手はグレースの倍の年齢で、しかも再婚だという。
まだギリギリ十代で、結婚適齢期を逃したとは言えない年だったし、れっきとした伯爵令嬢だ。なにもそんな相手を、と否定的だった父とグレースに継母はきっぱりと言った。

「確かに年は離れていますが、最近事業に成功していてこちらに十分な支度金をご用意下さいます。しかも連れ子もいない。花嫁には跡取りを望むだけで器量も性格も目を瞑ると言ってくださるのですよ。これ以上の縁談はありえません!」
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