現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「ありがとう、今はヴェネディクトの好意に甘えさせてもらうわ。それでグランサム公爵家に行けて、仕事を覚えられて、そうしたら就職出来るんですもの!」

本当はそんなに甘いものじゃないのかもしれない。司書の仕事を短期間で覚えるなんて難しいし、覚えたとしても誰か他の人が採用されたらグレースは働けないのだ。

でも、悩んでみても始まらない。お伽話のお姫様は虐めに耐えるばかりで自分から行動しなかったから、森に捨てられたり、家政婦代わりにこき使われたりしたのだ。

「さて、じゃあ荷造りね!」

そう言って立ち上がったグレースは気がつかなかった。
隣に座るヴェネディクトの笑顔にうっそりと黒いものが混じるのも、その呟きも。

「甘い誘いに乗った操り人形の男の子は悪い人に売り飛ばされちゃうんだよ、グレース」

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