現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない

「恋人って、もう！グレース、揶揄わないでくれよ」

ヴェネディクトはちょっと恥ずかしくなったのか頬を膨らませて。それでも話したいのか、少し顔を赤らませながら続けた。

「こんな尊敬出来る人に会ったのは初めてなんだ。厳めしい顔だし無口だし無愛想だし凄くとっつきにくい人なんだけどね、でも実は優しく思いやりのある懐の深い人なんだ」

「ヴェネディクトがそんなに褒めるんだもの、私もお会いするのが楽しみになるわ」

グランサム公爵が怖いとか厳しいというのは噂話に疎いグレースでも知っている有名な話だ。だからグレースも実は緊張して今日を迎えていた。

「きっとグレースも仲良くなれるよ。親しい人間からすると、ちょっとお茶目な方だし」

「お茶目ですって！？」

そんな噂話は聞いたこともない！驚きに目を見開いたグレースを見てヴェネディクトは大笑いした。