現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「グレースってば、普段はとても常識的で冷静なのに、時々びっくりするくらい感情をだすよね?」

「それはヴェネディクトの前だけよ。お義母様の前だと嫌味を言われちゃうし、アナベル達の前だと良いお手本になれないし。ヴェネディクトの前だと……そうね、気が緩んじゃうのかしら。困るわ」

「どうして困るの?どこかで気を抜くのは悪い事じゃないだろ?それにグレースの場合はそうでもしなきゃ、あの魔女と生きていけないし」

「魔女だなんて……」

思っても言ってはいけない、と年上らしく教えるべきだろうが、随分と上手い例えに笑い声を上げてしまった。何しろ継母の容姿は痩せすぎに細くてノッポなうえに、人妻らしく真っ黒な髪をひっつめている。

「ふふふっ。ああ、でもヴェネディクト。私があなたに甘え過ぎちゃうのが困るのは本当よ。こうやって偽の婚約者になってもらった以上、ちゃんと自立してあなたを解放するのが最終目標だもの。その時に精神的に頼ってたら笑い話にもならないわ」
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