現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
これは二日前、ヴェネディクトと話した後からずっと考えていた事だ。

これまで二人は単なる幼馴染だったから、お互いが結婚しても疑われない程度に訪ね会ったり世間話をするのも許容されると思っていたし、グレースもそのつもりだった。
きっとどんな人と結婚しても結婚しなくても、グレースにとってヴェネディクトと話す時間が大切だと知っていたから。

でも偽とはいえ一度婚約してしまえば、そうはいかない。この話を出来るだけ内輪のものにするつもりでもグランサム公爵を含め多少は社交界には知られてしまうのだ。グレースと婚約解消した後にヴェネディクトと結婚する相手にも失礼なるし格好の噂話になってしまうのだから、会うのは最小限にした方がいいだろう。

つまり、婚約を解消した時点でグレースはヴェネディクトと、彼との心地良い時間の両方を失ってしまうのだ。
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