現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「ヴェネディクトがちゃんと幸せになれるようにするから。ああ勿論、あなたが後ろめたくならないように、私もきちんと仕事して自立するわ」

真っ直ぐに向かいに座るヴェネディクトを強く見て笑顔で言い切ったのに、ヴェネディクトは深くため息を吐いた。

「違うよ、グレース。僕は君と離れたくて行動したわけじゃない。君をあそこから自由に飛び出せたくて動いたんだ」

「ーーーヴェネディクト?」

そしてグレースの視線を覆い尽くすほどの強い視線ではっきりと宣言された。
それに違和感は感じたけれど、きっとグレースに負い目を感じさせたくないのだと理解して、おずおずと頷いた。

今は責任感に溢れているヴェネディクトだって時間が経てば事の重大さに気付くだろう。この話の続きはその時で十分なはずだ。

「ヴェネディクト、もう少しグランサム公爵の事を教えてよ」

そしてもう一度、話題を変えたのだった。

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