現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「グレースも知らない僕がいるって事さ。もう十八歳だからね、当然だけど」

窓から外を見渡しながら呟くヴェネディクトは、確かにグレースが知っているいつものヴェネディクトとは違う人のように思えた。

優しくグレースの話を聞いてくれる穏やかで年下の幼馴染じゃなくて、自らの足で立つ立派な一人の紳士。不意に浮かんだイメージに戸惑ってしまう。

「そんな格好つけたってダメよ。ヴェネディクトが人参がまだ苦手なの、ちゃんと知ってるんですからね」

だから敢えて、そんな事には気付いてない振りで、お姉さんぶった口調で言った。でないと何かがかわってしまいそうで怖かった。

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