現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
そんな会話の後だ、さぞや厳しいスケジュールだと思ったのにグレースに言い渡されたのは、司書の研修は午前に二時間だけというものだった。

「どうしてかしら。もっと働けるし、勉強だってしたいのに……」

庭の東屋で、「せめて図書室にいない間に勉強できるものを貸してくれ」と半分無理やり借りた図書室の目録をめくりながら、思わずため息が出てしまった。

「それは仕方ないよ。パジェットだって仕事があるんだし、君に教えながらでは捗らないからね」

不意に出来た目の前に影に視線を上げると、ヴェネディクトが微笑んでいた。

「まぁ、聞いていたの?」

「聞こえたんだよ。グレースをお茶に誘おうと思って来たのに、ちっとも気付いてくれないから」
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