現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
今日は馬車の中で軽い昼食を摂っただけだからお腹が空いている。グレースが司書に挨拶したら一緒にお茶にしようと誘われていたのをすっかり忘れていた。

「ごめんなさい、目録を読んでいたのよ」

「読んで?嘘だね、開いてはいてもちっとも頭には入ってなかったろう?」

「それは……そうね」

言い繕ってみても先程の愚痴を聞かれていては説得力がないだろう。素直に認めて、悩みも打ち明ける。

「確かにパジェット氏のお仕事の時間を考えていなかったのは自分勝手な考えだったわ。でもせめて宿題というか、何を覚えるべきかを教えていただきたかったの。だって私には時間がないんですもの」

「グレース、焦る気持ちは分かるけれど闇雲に焦っても良い結果は生まないよ。知識を得る時は冷静に計画的にするべきだ」

そう言いながら、完璧なエスコートでグレースはお茶の用意がされたバルコニーまで連れて行かれる。

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