現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない

「でも……やっぱり焦ってしまわ」

促されるまま椅子に座ったグレースだが、気持ちがもやもやしたままでテーブルの上に手を伸ばす気にはなれなかった。

「分かるよ。僕も以前はそうだった。でもね、グランサム公爵に教えてもらったんだ」

「公爵に？」

「そうだよ。『若造、そんな焦りを隠さずにいるような半人前はいい餌食になって終わりだぞ』ってね。言われた時は腹が立ったけど、その通りなんだ。仕事をする時はハッタリも必要だし、裏で綿密に計算しておく必要もある。でも焦っていてはそんな準備、できはしないからね」

「ハッタリと綿密な計画？」

「そうさ。ビジネスには必要不可欠なんだ。グレースだって採用試験では必要になってくるよ」

「試験……えぇ。そうよ、ねぇ」