現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
目の前に並ぶお皿を見渡して、思わず声が出た。
この屋敷には今日の昼過ぎに着いたのだ。このお菓子達はたった二時間やそこらで用意できるものじゃない。

ベリーのタルトにクロテッドクリームとジャムを添えたスコーン、チョコレートのクッキーとフルーツのコンポート。量も種類もとても多くて、普段お茶の時間に出される三倍はあるだろうか。

「二日前にグランサム公と電話で話したのとは別でね、ここの執事に手紙を出しておいたんだ」

「手紙……あっ!だからだったのね」

そう言われると納得出来る。
グレースの為に用意された部屋には彼女の好きなピンクの薔薇が飾られていたのだ。「素敵な偶然だ」と思っていたものがヴェネディクトの気遣いだったとは。

「ーーーでも二日前よ?お手紙って届くまでもっと日数がかかるものじゃない?」
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