現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
昔、視察に行った父が領地から手紙をくれた時は、届くまで三日はかかっていた記憶がある。コテンと首を傾げて考えるグレースに、ヴェネディクトは急に慌て出した。

「や、あの、今は郵便も早くなったんだよ」

「へぇ」

納得はいかないが、デーブルに並ぶお菓子の存在を認めてから思い出した空腹もこれ以上待てないと、今にも音を立てそうだ。

「いただきまーす」

いそいそとフォークで口に運ぶ。

「んー、美味しい!」

「そう?それは良かった」

「ここの料理人ってとても腕がいいのね。お食事が楽しみになっちゃうわ」

ご機嫌になったグレースにカップに隠れてほっと安堵の溜息をついたヴェネディクトは、そういえばと話し出す。
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