現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「これから時間のある午後はこの屋敷や領地を散策しよう。庭の薔薇園も素晴らしいし、少し馬で行った所に湖や森もあるんだ。君もきっと気にいるよ」

「それは素敵!……でも、私は遊びに来たわけじゃないわ。勉強しないと」

薔薇園も森も湖もグレースの興味を引いて仕方ないが、ここには司書のお仕事を覚える為に来たのだ。パジェット氏に教えてもらう時間以外にも自分で勉強出来る事はあるだろう。

きちんと勉強して経験値を積むことこそグランサム公爵を紹介してくれ、偽の婚約者になってまでここに連れて来てくれたヴェネディクトの恩に報いる事になるはずだ。

真面目に考えるグレースに、でもヴェネディクトは首を振った。

「グレース、焦らないでって言ったろ?君には今、ちゃんと余暇を過ごせるようになる事も必要なんだ」
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