現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
刺繍や読書ならグレースの好きな事だし、仕事と思わず出来るからだ。
とは言え、やはり精神的プレッシャーは大きかった。

その辺りの話をヴェネディクトにした事はないはずだが、知っていたのか。

「別に難しいことじゃなかったさ。グレースが僕に会いに来る頻度が急に減るなんてなんて、普通変だと思うだろ?」

ヴェネディクトが気障な仕草でウィンクなんてするものだから、思わず笑ってしまった。本当、こういうさりげなさが嬉しい。

「ヴェネディクトが社交界にデビューしたから気を遣ってるんだと思ってくれてたら良かったのに。そしたら私の事を流石年上の気遣いが出来るレディだって尊敬してもらえたわ」

「それはないな。だって尊敬する前に僕が寂しくて寝込んでしまうから。そしたら君はお見舞いに来ざるをえないだろ?」
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